日本の暦と旬の野菜-秋
草木が霜をまとう季節、毎年10月24日頃に霜降(そうこう)を迎えます。2023年は10月24日。この頃、山が化粧をしたように紅葉が色付くことから、昔の人はその様子を「山粧う(やまよそおう)」と呼びました。日本の先人が残した言葉のセンスに、思わずため息をついてしまいそうです。
※二十四節気とは、1年を春夏秋冬の4つに分け、そこからさらに6つに分けた、約15日間の季節を表す言葉。現在は最初の日だけを指すことが一般的ですが、本来はこの15日間を表します。
※日本の暦は、旧暦(太陰太陽暦の暦法「天保暦(てんぽうれき)」)から、1872年にグレゴリオ暦(太陽暦)が採用され、新暦と呼ばれます。特別な表記がない場合を除き、日付は新暦です。
※二十四節気の日付は毎年異なり、1日程度前後します。
「栗名月」とよばれる十三夜とは?
10月半ば頃に訪れる、新月から数えて13日目の夜を、十三夜と称します。
新暦9月に迎えた十五夜は、里芋を備えることから「芋名月」と呼ばれますが、十三夜は収穫の祝いに栗を供えます。そのため、十三夜は「栗名月」として親しまれました。地域によっては同時期に収穫される豆をお供えし、「豆名月」と呼ぶところも。十三夜をお祝いするのであれば、お団子と一緒に、 おうちにある栗か豆をお供えするといいでしょう。
ところで、十五夜と十三夜、どのような関係があるか気になりませんか?実は十五夜と十三夜は対をなし、両方の夜を合わせて「二夜(ふたよ)の月」といいます。
今でこそ新暦9月の十五夜だけを祝う風習が定着しましたが、昔はかならず二夜の月を鑑賞しました。どちらか一方だけ見るということは「片見月(かたみづき)」とよばれ、縁起がよくないと考えられていたのです。
とはいえ、現代では片見月が一般的。せっかくですので、十五夜を見逃してしまった方は、十三夜の月を見上げてみるといいでしょう。日々の喧騒から離れ、ゆっくり月を見上げる日があってもいいですよね。
旬の野菜・くりは下処理で甘みをひきだす!
9月から10月の時期に旬をむかえる、くり。秋になるとスーパーの店頭に焼きぐりの甘い匂いがたちこめ、思わず手に取ってしまう方も多いのではないでしょうか。満月を彷彿とさせる、ころんとしたフォルムがかわいらしい野菜です。
くりといえば炭水化物が多い印象がありますが、実は葉酸や食物繊維が豊富なことが特徴。特に葉酸は3粒で68μg(マイクログラム)を含み、1日の目標量の約1/3程度が摂取できます。ただし、葉酸は妊婦の方以外は通常不足することの少ない栄養素ですので、おいしく適量を召し上がるといいですね。
さて、そんな旬のくり、せっかくであればおいしくいただきたいもの。ここでは、くりの甘味を最大限に引き出す食べ方をご紹介します。
くりを甘く調理するコツは、下ごしらえにあります。調理前に、あらかじめ3日ほど冷蔵庫で冷やしてみましょう。これにより、加熱したときにデンプンを糖に変える「アミラーゼ」という酵素を増やせます。アミラーゼの増加=甘味が増すという仕組みです。
さらに、くりを70度くらいの低温調理をすると、より甘くなりますよ。これは、アミラーゼが活躍する温度が40〜70度であるためです。熱の伝わりにくい土鍋を使用するのもいいでしょう。ただ、温度を管理しながら調理するのもなかなか大変なのも事実。気にしすぎず、下準備をしっかりしたら、あとは炊飯器などで手軽に調理するのもおすすめです。
<そのほかの旬の野菜 >
- さつまいも
- かぶ
- しいたけ
- チンゲンサイ
シャリっとみずみずしい果物・なし
9月から10月頃に、なしが旬を迎えます。なしといえばそのみずみずしさと独特の食感が特徴ですよね。
なしにも種類がさまざまありますが、親しみ深いものに幸水(こうすい)があげられます。甘みが強い品種ですので、食後のお口直しにはぴったり。ほかにも、甘味とともに酸味も感じられる豊水(ほうすい)、果肉がやわらかい南水(なんすい)などがあります。
秋の味覚が多く出回り始める季節、霜降。十三夜の美しい月を眺めながら、旬の食材をいただく秋の夜を過ごされてはいかがでしょうか。
参考文献:厚生労働省『食事摂取基準 2020年版』
『もっとからだにおいしい野菜の便利帳』(高橋書店)
『二十四節気の暮らしを味わう日本の伝統野菜』(株式会社G.B.)
WRITER
管理栄養士。栄養・レシピ・ヴィーガンなど、食に関する記事をWEBコンテンツで執筆。その他、カフェのメニュー開発、料理動画制作などをして活動。これまでは給食提供のほか、離乳食指導や食育指導に従事。幼少期から茶道を習っており、日本文化が好き。こども食堂を開くのが夢!
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