update - 2021.10.31

自家製ヴィーガンコンポストで作る畑には
エネルギーに満ちた植物が育ち
小さな生き物たちが息づく<後編>

野菜を愛する、小さなカフェ便り#10

ヴィーガンシェフ・料理研究家として毎日キッチンに立つ篠宮美穂さん。2011年からハワイのカフェで働きはじめ、豊かな自然と食、そして素敵な人々と出会いました。2019年に夫・ジャックさんとともに帰国し、日本でのヴィーガン生活がはじまります。今回は、ご夫婦のライフワークとなっている自家製ヴィーガンコンポスト作りと、小さな畑でのお話です。

小さな畑が、ご近所さんとの
コミュニケーションの場に

 

私がコンポスト作りに夢中になっていると、私がカフェをしていたときの常連さんから畑を貸してもらえるとの、うれしいお知らせが舞い込んだのである。さっそく、春先から大切に育てていたブルーターメリックの苗を、夏の間畑に植え替えた。そして秋には、美しい緑色の葉で畑がいっぱいになった。

 

ブルーターメリックの葉
ブルブルーターメリックの葉。美しい大きな葉の中心に濃い紫色の線があるのが特徴。ーターメリックの葉。美しい大きな葉の中心に濃い紫色の線があるのが特徴。


 

畑で作業をしていると、そこを通りかかった別の常連さんが、自分の畑の一部を使わせてくださるというのだ。ありがたいことに、私の畑はこうして“わらしべ長者”的に増えていき、今では3か所の畑で、自家製のヴィーガニックコンポストを使ったハーブや野菜づくりを楽しんでいる。農薬や化学肥料は一切使用していないが、土の状態は良好。植物も元気に育ってくれている。

 

住宅街にある畑の写真
一番大きい畑。現在はこの畑の隅でコンポストを作っている。落花生の収穫が終わり、冬の野菜の種をまき終えたところ。藁や雑草を乾燥させたものを地面に敷いて乾燥を抑えたり、雑草の生え具合を日々観察したりしている。

 

畑の写真
私が3畳畑と呼んでいる畑。春先には、30種ほど違う種類の種をまいてみた。いろいろな種類のハーブが育ったのだが、狭いところにたくさん植え過ぎたらしく、繁殖力の強いものに弱いものが負けてしまうという事態も起こった。日々勉強。

 

畑の写真
今年はブルーターメリックの横でケールやスイスチャード、ルッコラやビーツなどを育てた。できた葉野菜のうち、50パーセントは青虫たちとシェア(笑)。それでも、サラダやジュース、スムージーにする分には充分収穫できているのでありがたい。

 

幸運なことに、私がお借りしている畑は、ご近所の方たちが代々利用している土地。何十年も家庭菜園をされてきた先輩方が、畑初心者の私に、ちょっとした野菜の育て方のコツや知識を教えてくれる。それが、とても心強いのだ。逆に、私の畑では近所のスーパーに売っていないような野菜やハーブを育てており、今は畑の隅でコンポストをしているので、みなさんにとってはそれも興味深いらしい。というわけで、この畑が小さなコミュニケーションの場になっているのだ。

 

カモミールの花
成長スピードが速いカモミールは、次から次へと花が咲いて、収穫したものを乾燥させてハーブティーに。自分で作ったカモミールティーを飲んだのははじめて。とても香りが高く、リラックスできるとともに、胃腸にもよいとされている。

 

バタフライピーの花
えも言われぬ、鮮やかなブルーの色が美しいバタフライピーの花。アントシアニンという色素が、目やからだの老化防止に効果があるとされ、美肌やアンチエイジングの効果が期待されている。ハーブティーやレモネードなどで色も楽しめる。

 

十六ささげの写真
十六(じゅうろく)ささげは、長さ30センチ程の細い豆。味はマイルドな甘みがあり、歯ごたえがしっかりしていておいしい。順々にたくさん収穫できるので、畑に3本ほど植えておくと、ちょうどいい具合に食べることができる。

 

 

植物の成長と、そこに息づく生き物たち
畑には、想像以上の楽しみがあった

 

畑をはじめてみると、コンポスト作りだけでは味わえない楽しみがたくさんあった。種をまき、さまざまな形の小さな芽が出てきたときの喜び。雨が降るたびに、すーっと伸びていく茎や、大きく広がる葉。鮮やかな色の花や、ついに実になる瞬間。そして、旬のものをみなで分け合って食べることができる幸せ……。失敗もいろいろとあるが、それぞれの毎日の成長がとても愛おしく感じる。そして、ひとつの植物が育ち、枯れて種になるまでの期間は想像以上に長いのである。

 

 

パクチーの写真
パクチーは成長が速いので、春に植えたものが夏には種になる。できるだけ育てたものから種を採って、また次のシーズンに使うようにすると、毎回種を買う必要がなくなる。ケールやルッコラ、唐辛子なども自家採取した種から育てている。

 

パクチーの新芽の写真
採取した種から育てているパクチーの新芽。真冬の手前までは育てられるかもしれないと信じて、夏の終わりに種をまいたのが育ってきた。

 

落花生の芽
春先に、畑のいたるところから勝手に生えてきた落花生の芽(以前畑を使っていた方の落し物?)を並べてみると、4畝もできた。順調に育ったので収穫すると、根の先に根粒菌(こんりゅうきん)といわれる土壌細菌がたくさんついていて、とても興味深い。

 

落花生のご飯
収穫した生落花生と出汁昆布、塩、酒を入れて炊いた落花生ご飯。落花生と新米の甘みがなんともいえず、ほんわりやさしい味わい。

 

ビーツの写真
真っ赤な色が魅力のビーツ。ミネラルやビタミン、植物繊維などの栄養素が豊富で、アンチエイジングや血流改善などの効果が期待されている。我が家ではジュースやスムージー、サラダ、おにぎりなど、いろいろな料理に活躍する。

 

ビーツのおにぎり
ビーツのおにぎり。ほんの少しのビーツを細かく切ったものと胡麻をご飯に混ぜ込み、梅干を入れたおにぎり。色が鮮やかでお弁当などに喜ばれそう。

 

 

無農薬で野菜を育てる場合、いろいろな種類の虫や生き物がやってくる。虫よけ目的で、コンパニオンプランツ(※)を隣り合わせに植えたとしても、自然の植物の組み合わせなので、時には野菜が食べられたり、栄養を吸われたりしてしまう。それでもよく観察をしていると、野菜やハーブの花に集まってくる大小の蜂や蝶、茎や葉の裏に隠れているアブラムシを食べにくるテントウ虫、バッタや蝶などを捕食するカマキリや蜘蛛、背が伸びたオクラの実の先にとまる赤とんぼ、どこかの国の民族のお面のような模様のカメムシたち、土を耕すと出てくるヨトウムシやカナブンの幼虫、色艶めく巨大なミミズ……。そして、それらを狙って飛んでくる鳥たち。小さな生き物の世界を垣間見ることができて、とてもおもしろい。草むらに足を入れた時にチチチチチと飛んでいくバッタや、大きな蜂の羽音や、ミミズたちがいるぞと会話するときの、鳥たちの鳴き声に耳を傾ける時間が私は大好きである。

 

※コンパニオンプランツ……一緒に植えることで、互いの成長によい影響を与え合う植物のこと。

 

赤とんぼの写真
夏も終わり、種を収穫しようととってある背の高いオクラの枝の先端にとまった赤トンボ。秋の訪れを感じる。

 

大根の新芽
大根の新芽。いよいよ冬野菜の種まきがはじまる。夏の収穫が終わり、まわりの畑でも冬に向けて、いろいろな野菜の種まきや苗の植え替え作業が見られる。こうなると、のんびり者の私も焦って種まきをはじめる。


 

私の畑のある暮らしは、まだはじまったばかり。夏の収穫がひと段落し、先日種まきをした冬野菜の芽が出てきた。ここからどんな風に育ってくれるか、収穫できたらどう料理をしようか……。いろいろと楽しい想像はつきないのである。

 

<プロフィール>

 みほさんの画像

篠宮 美穂(しのみや みほ)

 ヴィーガンシェフ、ヴィーガン料理研究家、「MNEMONIC BEVERAGES」ディレクター。カフェを12年経営。渡米してヴィーガンカフェで働きながら、ヴィーガン料理、概念について学ぶ。現在は日本で、地球にやさしくユニークなプロジェクトを立ち上げ中。趣味は自家製酵母のパン作りと、ヴィーガニックコンポストの土づくり。

美穂さん(@rabbitbook)のInstagramページはこちら


 
シリーズをまとめて読む
野菜を愛する、小さなカフェ便り10-2 2021.10.31
【野菜を愛する、小さなカフェ便り#10】自家製ヴィーガンコンポストで作る畑には、エネルギーに満ちた植物が育ち、小さな生き物たちが息づく<後編>
野菜を愛する、小さなカフェ便り10-1 2021.10.27
【野菜を愛する、小さなカフェ便り#10】自家製ヴィーガンコンポストで作る畑には、エネルギーに満ちた植物が育ち、小さな生き物たちが息づく<前編>
野菜を愛する、小さなカフェ便り9-後編 2021.09.30
【野菜を愛する、小さなカフェ便り#9】私がヴィーガンを決意したワケ。そして、日本のヴィーガン事情とこれからのこと<後編>
野菜を愛する、小さなカフェ便り9-前編 2021.09.27
【野菜を愛する、小さなカフェ便り#9】私がヴィーガンを決意したワケ。そして、日本のヴィーガン事情とこれからのこと<前編>
野菜を愛する、小さなカフェ便り8 2021.08.25
【野菜を愛する、小さなカフェ便り#8】お皿の上が、まさにアート。ハワイでの出会いが、おもしろくてピュアな世界へ連れていってくれた
野菜を愛する、小さなカフェ便り7-2 2021.07.29
【野菜を愛する、小さなカフェ便り#7】出会いは偶然だからおもしろい!ハワイの食に関わる、個性豊かな友人たち<後編>
野菜を愛する、小さなカフェ便り7-1 2021.07.26
【野菜を愛する、小さなカフェ便り#7】出会いは偶然だからおもしろい!ハワイの食に関わる、個性豊かな友人たち<前編>
野菜を愛する、小さなカフェ便り6 2021.06.28
【野菜を愛する、小さなカフェ便り#6】ハワイ流のワイルド家庭菜園が、野菜を育てる楽しさを教えてくれた!
野菜を愛する、小さなカフェ便り5 2021.05.27
【野菜を愛する、小さなカフェ便り#5】ハワイの地で出合った海洋生物や海鳥たちが、私に教えてくれたこと
野菜を愛する、小さなカフェ便り4-2 2021.04.30
【野菜を愛する、小さなカフェ便り#4】ハワイ島のジャングルで過ごした、“一期一会な夜”<後編>
野菜を愛する、小さなカフェ便り4-1 2021.04.28
【野菜を愛する、小さなカフェ便り#4】ハワイ島のジャングルで過ごした、“一期一会な夜”<前編>
野菜を愛する、小さなカフェ便り3 2021.03.30
【野菜を愛する、小さなカフェ便り#3】私をヴィーガンへと導いたのは、 野菜好きの仲間たちと、ハワイの豊かな大自然
野菜を愛する、小さなカフェ便り2 2021.02.22
【野菜を愛する、小さなカフェ便り#2】本との出合いが導いてくれた、ハワイでのヴィーガン修行
野菜を愛する、小さなカフェ便り1 2021.01.29
【野菜を愛する、小さなカフェ便り#1】カフェオープンから、N.Y.でのおいしい日々