日本の暦と旬の野菜-夏
2024年6月5日、梅雨入りしたこの頃には、芒種を迎えます。
芒種とは、元々は稲のような芒(のぎ)をもつ穀物を植えるのに適した季節であるという意味。その由来の通り、この季節は、水田が美しくきらめく頃です。
また、この頃、 鮎(あゆ)の漁が解禁されることをご存知でしょうか。そのため、茶室では、若鮎を模した和菓子が出されます。
※芒・・・米や麦のような 、小穂の先端にある細長い突起のこと。
※二十四節気とは、1年を春夏秋冬の4つに分け、そこからさらに6つに分けた、約15日間の季節を表す言葉。現在は最初の日だけを指すことが一般的ですが、本来はこの15日間を表します。
※日本の暦は、旧暦(太陰太陽暦の暦法「天保暦(てんぽうれき)」)から、1872年にグレゴリオ暦(太陽暦)が採用され、新暦と呼ばれます。特別な表記がない場合を除き、日付は新暦です。
※二十四節気の日付は毎年異なり、1日程度前後します。
旧暦では田植えに適した季節
先述の通り、芒種とは、芒をもつ穀物を植えるのに適した季節。ただし、ここで指すのは旧暦の芒種なので、5月頃にあたります。新暦の芒種である6月5日は、畑の種まきに適した頃といわれています。
実は3〜10月まで楽しめる、みょうが
この頃、旬を迎える野菜はみょうが。みょうがといえば、薬味として使用する機会が多い野菜ですよね。シャキッとした歯応えと、鼻に抜ける独特の風味がクセになる野菜です。
みょうがといえば夏のイメージが強いですが、3月頃に旬を迎え、10月頃まで長く楽しめる野菜です。薬味としてだけでなく、酢漬けにしたり味噌汁に入れたりと、さまざまな調理法を楽しんでみてください。
<みょうがの栄養>
みょうがには、α-ピネンという香り成分が含まれます。この成分が、みょうが独特の香りを生み出しているのです。
α-ピネンは、「森林浴の香り」などともいわれ、リラックス効果が期待できる香りです。たとえば、落ち着く木の香りであるヒノキには、このα-ピネンが50%程度含まれているといわれています。このようなことから、α-ピネンをふくむみょうがを摂取することで、体をリラックスさせられます。
<みょうがの歴史>
みょうがの原産国はアジア東部と考えられています。歴史は非常に古く、それは歴史上の書物にみょうがの名が記されていることから、明らかです。
たとえば、3世紀に記された「魏志倭人伝(ぎしわじんでん)」には、みょうがを意味する文字が記されています。つまり、その頃には、すでにみょうがは日本に存在していたのです。
ほかにも、平安時代に記された「本草和名(ほんそうわみょう)」や、宮中の食事を記録したことで有名な「延喜式(えんぎしき)」にも、その名は記されています。 古い昔、宮中の貴族が食べていた野菜が私たちの食卓に並んでいると思うと、不思議な気持ちになりませんか?
<そのほかの旬の野菜>
この時期に旬を迎えるそのほかの野菜は、次の通りです。
- アスパラガス
- レタス
- にんじん
- そらまめ
- とうもろこし
軸の色を見て選びたい、さくらんぼ
みずみずしい赤色が可愛らしい果物、さくらんぼ。食べ頃は、5月〜7月頃です。
さくらんぼの中で特に有名な品種には、佐藤錦(さくらにしき)がありますね。もっとも多く生産されている品種で、糖度が高く、果汁が多いのが特徴です。
スーパーでおいしいさくらんぼを見分けるコツは、皮の様子と軸の色。
果皮は鮮やかでハリとツヤのあるものを選びましょう。また、軸の色が茶色いものは収穫されてから日が経っています。軸が緑色のものを選ぶと、より新鮮なさくらんぼを入手できますよ。
芒種は、梅雨真っ只中の不安定な季節です。寒暖差がある頃だからこそ、旬の野菜を取り入れて、免疫力のある体づくりを意識したいですね。
また、今回ご紹介したみょうがのように、ふだん食べている食材の歴史を調べてみると、新しい見方ができるかもしれませんよ。
WRITER
管理栄養士。栄養・レシピ・ヴィーガンなど、食に関する記事をWEBコンテンツで執筆。その他、カフェのメニュー開発、料理動画制作などをして活動。これまでは給食提供のほか、離乳食指導や食育指導に従事。幼少期から茶道を習っており、日本文化が好き。こども食堂を開くのが夢!
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