茹で汁まで全部楽しめる金時草
おいしさを活かす3つのポイント

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vol.11 金時草<Gynura crepioides>

表は緑色、裏は赤紫色と、珍しいリバーシブルの葉をもつ金時草(きんじそう)。読みかたもさる事ながら、食べかたや風味、食感なども想像がつかないのではないでしょうか。今回は金時草のおいしさを活かすために知っておきたい、3つのポイントをご紹介します。

伝統野菜として守り続けられる、美しき健康野菜

金時草


金時草はキク科の野菜で、原産は東南アジア。日本へは18世紀に中国から現在の熊本県に伝わったとされていますが、現在の主な産地は石川県。金時草は加賀野菜のひとつとして親しまれています。


「きんじそう」と読み、葉の裏の色が金時芋や金時豆のようであることから名付けられましたが、「きんときそう」と読まない理由ははっきり分かっていません。


熊本県では「水前寺菜」、愛知県では「式部草」、沖縄県では「ハンダマ」と異なる呼び名で栽培されており、いずれも伝統野菜として守り愛されています。モロヘイヤやつるむらさきのように粘りがあり、独特のほろ苦さが味わえます。


また、葉の裏側の紫色は、アントシアニンというポリフェノールによるもの。ブルーベリーにも多く含まれる成分で、視覚機能の改善や眼精疲労の予防などに高い効果が期待できます。ほかにも、β-カロテン・カリウム・カルシウムも豊富で、ストレス低減に効果が期待できるとされるGABAも含まれています。

 

 

 

旬をおいしく味わうための、知っておきたい3つのポイント

金時草


金時草は、火の通りかたが異なる葉と茎に分けると、調理がしやすくなります。茎は固いですが、加熱すれば食べることができます。また葉を茹でた後の茹で汁も有効活用できるので、捨てるところがないんです。


今回は、「葉」「茎」「茹で汁」に分けて調理のポイントをご紹介します。

 

 

<ポイントその1>
葉はサッと湯にくぐらせる程度に


葉は茎から摘み取るようにして分けます。熱湯にくぐらせ10〜20秒ほどで引き上げます。茹で汁もあとで使うので、捨てないようにしてください。


加熱すると特有のぬめりが出てきて、刻むとさらにぬめりが強くなります。葉の色が濃く大きいものほどぬめりが強いので、お好みに合わせて選んだり加熱時間や刻み具合を調整してみてください。

 

 

<ポイントその2>
茎は油炒めやリボベジで最後まで楽しむ


葉を摘み取った残りの茎は、硬さが残るのできんぴらなどの炒めものに活用するのがおすすめ。にんじんなど彩りのある野菜と組み合わせるのもいいですね。


また、茎は土や水に挿しておくと新しい葉が出てくるので、再生野菜(リボベジ)としても楽しめる優れもの。硬いからと言って捨ててしまってはもったいないですよ。

 

 

<ポイントその3>
鮮やかな茹で汁はポリフェノールたっぷり


葉を茹でた残りの茹で汁は、目を引くほどの鮮やかさ。紫色の色素が溶け出し、この中にはポリフェノールがたっぷり含まれています。砂糖を加えゼラチンで固めれば、きれいな色のゼリーに生まれ変わります。


ゼラチンで固めず少し煮詰めてシロップのようにすることも。炭酸水で割って爽やかなジュースとしても楽しめますよ。ほかにも、茹で汁で炊いたごはんはきれいなピンク色に仕上がるので、さまざまな料理に活用してみてくださいね。

 

 

金時草の酢の物と茹で汁ゼリー

 

金時草のレシピ

【材料(酢の物)】金時草…1束、★砂糖…小さじ2、★しょうゆ…大さじ1、★酢…大さじ1、おろし生姜…お好みで

材料(ゼリー)金時草の茹で汁…300ml、砂糖…大さじ2、粉ゼラチン…5g、レモン果汁…小さじ1

 

【作り方】

金時草は葉を摘み、湯を沸かした鍋に入れる。
再度沸騰したら20秒茹で、流水にとり、水を絞る。
茹で汁は熱いうちに、砂糖・ゼラチンを溶かし、レモン果汁を加えて冷やし固める。
ボウルに★の調味料を混ぜ合わせ、食べやすい大きさに切った金時草を加えて和える。
お皿に盛り、お好みでおろし生姜をのせる。

 

【ひとことアドバイス】

・茹で汁ゼリーは、ゼラチンを溶かさずにシロップとしても活用できます
・レモン果汁を加えなければ赤紫色、レモン果汁を加えるとピンク色に仕上がります
・他の色のゼリーと2層にしたりと、お好みでアレンジしてください

 

 

 

 

ひとつで3役以上をこなす、進化し続ける伝統野菜

金時草


葉、茎、茹で汁と捨てるところなく食べることができる金時草。1袋でいくつもの料理が楽しめる、とってもお得な野菜ですね。茎は水差しして葉を再収穫することもできますし、茹で汁は汎用性の高さも忘れてはなりません。


古きよき伝統野菜でありながら、その食べかたはまだまだ進化し続ける予感さえします。11月のはじめ頃まで楽しめる金時草、あなたはどの部分から楽しんでみますか?

 

 

イラスト/中川美香

 


 

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WRITER

小島香住
Kasumi Kojima

野菜ソムリエプロ&管理栄養士。食品メーカーでの営業・商品企画開発・メニュー開発などの勤務を経て、現在は1歳の男の子の育児をしながら、WEBサイトやInstagramで野菜の情報を発信。セミナー講師としても活動している。
「まんぷくベジでは、
野菜や果物のすばらしさをたくさんの方に知ってもらうため、おいしく食べて、キレイで健康に過ごすための情報を発信していきます!」