私がヴィーガンを決意したワケ。
そして、日本のヴィーガン事情と
これからのこと<後編>

野菜を愛する、小さなカフェ便り#9

ヴィーガンシェフ・料理研究家として毎日キッチンに立つ篠宮美穂さん。2011年からハワイのヴィーガンカフェで働きはじめ、豊かな自然と食、そして素敵な人々と出会いました。そして、いよいよ美穂さんのストーリーは帰国後へ。ヴィーガンとして、そしてご夫婦一緒に、日本での暮らしがはじまりました。今回は、前編に続く後編をお届けします。

私がヴィーガンを決意したワケ。そして、日本のヴィーガン事情とこれからのこと<前編>はこちらより>

ヴィーガン料理はアイデア次第。
一番大切なのは、“楽しむ”こと

 

皆さんはスーパーで買い物をするときに、食品表示ラベルをどのくらいチェックするだろうか。私と夫が買い物をする場合、それは常に必須である。ハワイでは仕事上、ヴィーガン食品の会社名や商品名も把握していた。さらに、ヴィーガンマークなどでわかりやすく、そして正しく記載され、あまり詳しくチェックする必要がなかった。しかし日本では、ヴィーガンに関する知識度や認識度が、海外に比べるとまだまだ低いように感じられる。

 

最近のトレンドだからと、“PLANT BASED”というタグを頻繁に目にするようになったが、なかにはまったくPLANT BASEDではない商品にも貼ってあったりもする。私がチェックするのは、肉や魚、鰹節エキス、砂糖(精製されている白砂糖は不純物を濾過する過程で動物の骨を使用しているため)、乳製品、卵、蜂蜜、ゼラチンなど、動物性のものが入っていないものであるかどうか。たとえヴィーガンの食品であっても、ラベルを見ると添加物がたくさん入っていることも多く、それならば家で作ってしまおうかということになる。

 

ヴィーガンのチーズ
野菜と味噌などを使って作るビーガンチーズ。マック&チーズというマカロニをこのチーズソースで和える濃厚な一品は、アメリカの家庭料理。一から作るのは手間がかかるが、いろいろ作ってみるのも楽しい。

 

わが家の食生活はかなりシンプルで、揚げ物は別にして、オイルや塩、甘味料などはあまり使わずに料理をすることが多い。オイルを使う代わりに水で炒めたり、甘味料を使う代わりにグレープフルーツやオレンジなど、フルーツの絞り汁などを使って料理をする。塩を使う代わりに、生姜やスパイスなどを使ったりもする。サラダもドレッシングはあまり使わず、緑の濃いケールなどの葉野菜と、旬のハーブやビタミンCが豊富なフルーツや野菜と一緒に組み合わせて食べる。こうすると、鉄分などの栄養素をしっかり摂ることができ、また個々の繊細な味を楽しむこともできるのである。
 

 

フルーツを使った、色とりどりのサラダ
グリーンにイチゴやオレンジ、ビーツなどで彩りを添えたサラダ。冷蔵庫にあるフルーツを自由に組み合わせて、旬のフルーツや野菜を楽しむ。


 

柿とカリフラワーのサラダ
柿とカリフラワーのサラダ。柿はかためのものを選び、カリフラワーはフライパンでさっと炒める。食感と味のバランスが楽しめるサラダ。もちろんわが家の場合は味つけ不要(笑)。


 

また、旬のフルーツを普段の一品に加えてみたりすると、ときに意外な発見がある。とくに私たちのお気に入りは柚子である。柚子の季節になると、我が家の料理は柚子三昧になる。餃子におでん、唐揚げ、サラダ…、何にでも柚子を入れてしまう。あのふんわり薫る柚子の季節が、今から待ち遠しいのである。


お菓子を作る時は、砂糖やメープルシロップなどの甘味料を使う代わりに、バナナやりんご、かぼちゃ、デーツなどを使って作ると、自然の甘みだけで充分に甘くておいしい。むしろ、今までは砂糖を入れなければと思っていたのが不思議なくらいだ。卵の代わりに使うのは、バナナやフラックスシード、チアシードなど。
特にオメガ3脂肪酸が豊富に含まれるフラックスシードやチアシードは、ヴィーガン生活の栄養素的には欠かせない食材。私は、一晩水に浸けておいた大さじ一杯程のチアシードを、翌日コールドプレスジュースや自家製レモネード、麦茶などに入れて飲んだりしている。

 

甘味料不使用のパン
甘味料は不使用。ドライフルーツや旬のフルーツを使って。

 

甘味料不使用のケーキ
こちらも甘味料は不使用。バナナやフラックスシードを使って作ると、しっとりリッチな味わいに。

 

チアシード入りのドリンク
自家製コールドプレスジュースに、チアシードを入れて。チアシードは味がないので、飲み物やドレッシングに入れるのがおすすめ。血液をサラサラにしてくれたり、アンチエイジングや便秘対策などにも効果があるとされている。

 


最近では豆乳以外にも、アーモンドやカシュー、オーツ、ヘンプなどの植物性ミルクをスーパーやコンビニで見ることも増えてきた。これも、実は家で簡単に作ることができる。ナッツ類は一晩浸水させ、翌日に新しい水に取り替えてミキサーにかけ、絞り袋を使って漉して作る。オーツやヘンプシードは、水と一緒にミキサーにかけるだけ。自分で作ると、保存料や甘味料がもちろん入っていないのでカラダにもよい。手作りのものを飲んでみると、その違いが歴然とわかるので、興味のある方はぜひ試して頂きたい。ちなみに私は、オーツミルクを作った後のオーツのかすを使ってフェイスパックをするのだが(水を含んだオーツのかすをただ顔に塗るだけ)、お肌がつるつるになり、これも楽しみのひとつである。

 

オーツミルクの残りカス
オーツミルクを作った後のオーツのカス。水を含んでやわらかくなっているので、これを顔に塗って数分フェイスパックすると、お肌がつるつるに。顔に塗っている最中は、オートミールクッキーを食べたくなる。(個人差があるので、かゆみなどある場合は使用しないでください)

 
 

このように、私たちの日本でのヴィーガン生活は幕を開けた。日本ではこの2~3年で、ヴィーガンやベジタリアンの食生活も浸透してきたように思える。しかし、いろいろな方と話をすると、ヴィーガンについてわからないことだらけで、興味はあるけれどどこからはじめていいのかがわからないということをよく聞く。

これからの私にできることは、皆さんにヴィーガンについてもっと知ってもらい、楽しみながら生活の中に取り込んでもらえるよう、私が今まで培ってきた知識や経験をいろいろな形でシェアしていくことである。何よりも、“楽しい”が一番である。

 

私がヴィーガンを決意したワケ。そして、日本のヴィーガン事情とこれからのこと<前編>はこちらより>


 

 

<プロフィール>

 みほさんの画像

篠宮 美穂(しのみや みほ)

 ヴィーガンシェフ、ヴィーガン料理研究家、「MNEMONIC BEVERAGES」ディレクター。カフェを12年経営。渡米してヴィーガンカフェで働きながら、ヴィーガン料理、概念について学ぶ。現在は日本で、地球にやさしくユニークなプロジェクトを立ち上げ中。趣味は自家製酵母のパン作りと、ヴィーガニックコンポストの土づくり。

美穂さん(@rabbitbook)のInstagramページはこちら


 
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