出会いは偶然だからおもしろい!
ハワイの食に関わる、個性豊かな友人たち<前編>

野菜を愛する、小さなカフェ便り#7

ヴィーガンシェフ・料理研究家として毎日キッチンに立つ篠宮美穂さん。2011年にハワイへ渡り、ヴィーガンカフェで働きはじめます。今回のお話は、美穂さんがハワイ時代に出会った友人たちの話。ハワイを愛し、そして自然や食と関わり続けるみなさんをご紹介します。

栄養学を学び、食と自然の大切さを後世につなげる

Tasia(ターシャ)

ターシャさんの写真



ターシャと出会ったのは、私がインターンとしてヴィーガンカフェで働きはじめた日。すでにスタッフとして働いていたターシャは、いわば私の先輩であった。日本人の父親と、アメリカ人の母親の間に生まれたハワイ育ちの彼女は、4人兄弟姉妹の長女。英語の先生として日本に住んでいたこともあり、日本語を少し話すことができた。しっかり者の優等生なのだが、茶目っ気がありユーモラスで、そのギャップが微笑ましい。黒縁のメガネがトレードマークで、思わず、先生!と呼びたくなってしまう。彼女の祖母や母親がジュエリーに関わる仕事をしていたということもあり、その遺伝子を継いで手先も器用でセンスも良く、アクセサリーを自分で作ったり、作るのを教えてくれたりもした。

 

アクティブな彼女とは、よく一緒にビーチに行ったり、トレッキングに行ったり、料理をすることもあった。彼女が選ぶ料理のリクエストは、「かぼちゃと小豆のいとこ煮」や「桜の花びら入りのおこわ」など、日本的な家庭料理が多い。それらを彼女と一緒に料理することは、新鮮なようで懐かしいような、そんな気持ちにさせてくれた。時には、彼女がユニークなレシピを見つけてきて、それを一緒に作るのもとても楽しかった。

 

畑の中で立っている女性
畑でコンポストを作っているターシャさん。

 

一緒に働いている当時から、大学で栄養学を学んだり、ローカルファームを手伝ったり、子どもたちに食品栄養学や園芸について教えたりしていた。常に多忙な彼女は2021年現在、ハワイ大学ウエストオアフ校にある、サスティナブルなコミュニティフードシステムの学士号を取得するために作られた、体験学習ガーデンで働いている。そこで、学生オーガニックガーデンプログラムのコーディネーターとして日々活躍しているのだ。
 

畑の中のワークショップの様子
高校生とコンポストについて学び、一緒に作るワークショップなども担当。

 

そしてその仕事のかたわら、「Nekko Wellness」というスキンケア商品のブランドを立ち上げたのである。この「Nekko Wellness」では、自然と私たちとの調和、昔から伝わる伝統文化、先祖や大地からの教え、そこから得られる豊かさや癒しを大切に、自身や友人たちが育てたハワイ産の植物を使用したスキンケアの商品を作り販売している。自然な植物の発色と、それぞれの効能が魅力的なスキンケアシリーズは、その季節に採れるものだけで生産されるため、数もごくわずか。ぜひ、一度試してみたい。
 

根っこを使った化粧品

 

葉っぱを使った化粧品

 

「Nekko Wellness」

https://instagram.com/nekko_wellness
https://www.etsy.com/shop/venusgurlz

 

 

 

ベトナム料理をアーティスティックなひと皿に!

Thao(タオ)   

植物を持つ女性の写真


カフェで働きはじめてしばらくした頃、新しく入ってきたスタッフがタオだった。フィラデルフィアからハワイに移住してきたという彼女は、歌とダンスが得意。とても激しい感情の持ち主だが、そこはかとなく繊細でやさしい。タオが歌を歌うと、彼女のもっているものが一気にあふれ出して、その場にいる人たちは魅了される。そんな天性の魅力がある彼女とは、職場でも仕事以外でも、楽しい時も辛い時も、おいしい料理を食べる時も、ビーチに寝転がる時も一緒に過ごした。圧倒的な力で癒してくれる、私にとってのヒーラー(癒してくれる人)である。

 

フルーツを抱える女性
黄色いフルーツは「アビウ」という種類で、とても珍しい。

 

彼女の作る料理のルーツはベトナム。代々受け継がれてきたのであろう、スパイスの使い方が上手で、抜群の味覚の持ち主だ。アメリカ育ちで旅好きの彼女がそれを自由に使いこなすと、タオスタイルの一品ができあがる。彼女の気分で変わる髪の色と同様に、皿の上にもアーティスティックな世界が広がるのだ。


 

ベトナムの麺類

 

一緒に料理をすると、同じアジアがルーツでも、食材の調理方法やハーブ・スパイスなど調味料の違いにとても刺激を受ける。じっくりと時間をかけて、楽器を奏でて歌いながら料理をする、彼女ならではの料理法。彼女の真似をしてみても、到底同じ味は出せないのである…(笑)。

 

彼女は2021年現在、カカアコにある「FISH CAKE」というアートショップの中で、週に3日ほど、「Apothecafé」という名でポップアップカフェを担当している。ハーブや野菜で色付けした麺が美しいフォーや、自分で育てた野菜やフレッシュなローカル野菜を使ったアジアスタイルのカレーなど、売り切れ御免でランチを提供している。そのほかにも、バタフライピーやハイビスカス、ローズ、ジャスミン、ホーリーバジルなどを使った、色の変化を楽しむことができるハーブティーが人気だそうだ。
 

色とりどりのワンプレート

 

バタフライティー

 

 

「Apothecafé」
https://instagram.com/apothecafe


「fishcake」
https://www.fishcake.us/
https://www.fishcake.us/pages/the-cafe

 

<後編に続きます>


 

 <プロフィール>

 みほさんの画像

篠宮 美穂(しのみや みほ)

 ヴィーガンシェフ、ヴィーガン料理研究家、「MNEMONIC BEVERAGES」ディレクター。カフェを12年経営。渡米してヴィーガンカフェで働きながら、ヴィーガン料理、概念について学ぶ。現在は日本で、地球にやさしくユニークなプロジェクトを立ち上げ中。趣味は自家製酵母のパン作りと、ヴィーガニックコンポストの土づくり。

美穂さん(@rabbitbook)のInstagramページはこちら


 
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