野菜を愛する、小さなカフェ便り#9
ヴィーガンシェフ・料理研究家として毎日キッチンに立つ篠宮美穂さん。2011年からハワイのヴィーガンカフェで働きはじめ、豊かな自然と食、そして素敵な人々と出会いました。そして、いよいよ美穂さんのストーリーは帰国後へ。ヴィーガンとして、そしてご夫婦一緒に、日本での暮らしがはじまりました。
ヴィーガンになった私を
そのまま受け入れてくれたこと
2019年、ついに日本に帰ってきた。
ヴィーガンになってから、初めての帰国であった。2011年頃からヴィーガンのことを学びはじめ、自分自身が完全にヴィーガンになるまで約6年の歳月が流れていた。日本文化特有の「まわりと同じく」から抜け出せなかった。ハワイは個人を尊重するアメリカ文化。まわりにヴィーガンの友人たちも多かったので、ヴィーガンとして生活することに気を遣ったりする必要もなかった。しかし日本に一時帰国したときなどは、ヴィーガンの食材も、レストランやカフェなどで扱う店も少なく、家族や友人に気を遣ってしまったりで、なんとなく流されていた。
けれど、ここ近年の気候変動や、自分が学んできたこと、目をそらせない事実(動物虐待や環境破壊など)によって、もう中途半端でいるべきではないな、と思ったのである。そして2017年のある日、突然ヴィーガンになろうと決心し実行したのだった。
日本に帰国して、私が何よりうれしかったのは、家族や友人たちの近くにいられることだった。そして、私がヴィーガンであるということを伝えても、家族や友人たちは変わらずに接してくれたのだ。そのうえ、興味を持ってくれたり、一緒に出かけるときはヴィーガンレストランを見つけておいてくれる。そんなやさしい人たちがまわりにいてくれて、私はつくづく恵まれていると思う。いつも、感謝の気持ちでいっぱいである。
日々の暮らしの中で、
自分たちにできることコツコツと
その一方で私たちが直面したのは、ヴィーガン食材やオーガニック食材のバラエティーの少なさと過剰なパッケージだった。近所のスーパーに行っても、思うように食材が揃わず、途方に暮れたものだ。オーガニックの食材も、量の割には価格が高い。しかも、そのほとんどがローカルではないので新鮮さに欠け、植物のパワーが感じられない。そして何もかもが、プラスチックのパッケージに包まれている。なんとも悩ましいスタートだった。
というわけで、どのように自分たちの食料を確保するかが、目下の課題となった。最初の頃はヴィーガン食材を取り扱う店を探し、まず試しに少量ずつ食材を購入。味や安全面、栄養面、価格など、自分たちが納得できるものを探した。気に入った食材や使う量がある程度決まってからは、ナッツ&シード類、豆類、無農薬・無化学肥料の野菜やフルーツ、輸入ヴィーガン食材、オーガニックのシャンプーや歯磨き粉などは、オンラインで1~2カ月分をまとめて購入することにしている。
その利点は、
①宅配だと重いものを持つ手間が省ける
②たくさん使うものは、できるだけ大きな単位で購入。家で詰め替えて、プラスチックごみを減らすことができる
③食材購入のための時間を短くして、その分自分たちの時間が有意義に使える
④プラスチックの梱包をできるだけ避けたいので、可能であれば業者さんや農家さんに、新聞紙などで包んでくださいとリクエストをする。ほとんどの場合は、新聞紙のみで包んで送ってもらえる
ただ、すべてをパーフェクトにするのは無理なので、日々の食材(野菜や豆腐など)は近所のスーパーや商店で、購入数が決まっているものや特別なものはオンラインでと、購入場所はある程度分けている。たまに、ファーマーズマーケットに出かけたりも。
もうひとつ、私が実行しているのがノートづくり。自分たちが消費するものや、その量を1週間ずつノートにまとめ、ショッピングリストを作っている。そうすることで、より明晰なデータが出るし、日々の家計や自分たちが食べているものを見つめ直すことができ、暮らしの役に立った。
後半に続きます。
<プロフィール>
篠宮 美穂(しのみや みほ)
ヴィーガンシェフ、ヴィーガン料理研究家、「MNEMONIC BEVERAGES」ディレクター。カフェを12年経営。渡米してヴィーガンカフェで働きながら、ヴィーガン料理、概念について学ぶ。現在は日本で、地球にやさしくユニークなプロジェクトを立ち上げ中。趣味は自家製酵母のパン作りと、ヴィーガニックコンポストの土づくり。
美穂さん(@rabbitbook)のInstagramページはこちら。
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