10月は「世界食料デー」月間
フードロス削減においしく貢献!

2020.10.16
WRITER/味原みずほ

10月16日は「世界食料デー」。国連が定めた世界の食料問題を考える日です。世界では食料が不足し飢餓で苦しんでいる国がある一方、日本をはじめ先進国では食料過多によるフードロス(食品ロス)の問題をかかえています。本来は食べられるのに大量の食品が廃棄されてしまっているのです。

日本のフードロスの現状は、年間612万トン(農林水産省及び環境省「平成29年度推計」)。なんと、毎日(大型10トン)トラック約1760台分の食品を廃棄していることになります。

食べ残したり、野菜の皮を厚くむき過ぎたりして家庭から出てしまうロスは全体のおよそ半分(約300万トン)。なんとも耳が痛い話ですが、身近にある問題ゆえ、すぐに意識して取り組むことはできそうです。しかし、私たち消費者が思いもよらない生産現場で発生するロスも実はたくさんあるのです。

 

「味はめちゃめちゃ良いのですが、キズがついたり、形がいびつなため販路先がない。土づくりからこだわりを持つ農家さんが真心を込めて育てたにも関わらず、さまざまな理由で捨てられてしまう果物や野菜がたくさんあるんですよ」と話すのは、東京・天王洲にあるデイブレイク株式会社の代表、木下昌之さん。特殊冷凍テクノロジーで規格外食材を新たな価値あるものへ生まれ変わらせる事業を手がける、熱き社長です。

 

デイブレイク株式会社代表 木下昌之さん

 

木下さんは、生産現場で廃棄されてしまう規格外食材の救済、さらには、私たちも自宅でおいしくフードロス削減に貢献できる仕組みを構築。生産者も消費者もお互いにハッピーになれる仕組みとは、一体どのようなものなのでしょうか?

 

特殊冷凍テクノロジーで無駄を価値に変える?!

デイブレイクは特殊冷凍機の販売をメインに行うかたわら、その特殊冷凍技術によって加工した果物や野菜の卸売り事業も手がけています。この特殊冷凍技術とは、どういうものなのでしょうか?

 

デイブレイク株式会社代表 木下昌之さん

 

「僕たちの手がける特殊冷凍とは、マイナス35度まで一気に急速冷凍する技術です。一般家庭の冷凍庫はマイナス18度でゆっくりと時間をかけて固まるのですが、食べ物の中の水分が氷に変わるとき、その緩やかなスピードだと、氷の結晶がだんだん大きくなり、食べ物の細胞膜を破いてしまうんです。そうすると、解凍した際にドリップといって、おいしい成分が流れ出てしまう。その点、急速冷凍は氷の結晶を小さく小さく生成することができるので、解凍したときに、ほぼ元の状態に戻すことができる。つまり、採れたてのおいしさをそのままとじ込めることができるんです」

 

果物本来の味と農家さんの思いも、まるごととじ込める

その特殊冷凍技術を使って2019年3月に誕生したのが、フローズンフルーツのブランド「HenoHeno」。木下さんはその3年前から全国のフルーツ農家を訪れ、味や品質の確認、作り手の思いに触れてきました。

フルーツ農家さんたちの出荷先は主に市場。しかし、キズがついたり、サイズが小さかったり、形がいびつな規格外のフルーツたちは行き場がなく、捨てられてしまう運命なのです。どれも愛情を込めて育て上げたものなのに、もったいないことですよね。木下さんが扱うのは、そんな行き場を失った規格外のフルーツたち。

 

フローズンフルーツHenoHeno

 

「HenoHenoとはハワイ語で“愛らしい”という意味なんです。愛情を込めて育てられたものなのに捨てられてしまう。そういうものを愛らしいものに変えるという意味を込めて名付けました」

 

採れたてのおいしさを特殊冷凍技術によってギュッととじ込められたフルーツたちは、HenoHenoオンラインストアなどから通信販売で手に入れることができます。

扱っているフルーツは季節により約20種類。その中のひとつ、デコポン(不知火)は熊本・水俣の農家さんたちが作っています。水俣はかつて高度経済成長期、水俣病などの公害問題を抱えた過去をもつ地域。そのイメージを払拭しようと、地域全体で農薬などに対する強い反対の声があがり、以来数十年、無農薬栽培や自然栽培に取り組む農家が多いのだそうです。

 

熊本・水俣で無農薬栽培に取り組む農家さん熊本・水俣で無農薬栽培で育ったデコポン

 

「しかしながら、こうしてつくられたフルーツはスーパーなどに並ぶものと比べると、どうしても見た目が悪くなってしまうという理由で、多くの人に手にとってもらえないというのが現状としてあります。見た目は悪いですが、それが無農薬栽培・自然栽培で育った証。お店に並ぶどれよりもおいしいと思います!」

 

農家さんのあたたかい真心と、ひんやり甘い口福感

HenoHenoの商品になるフルーツは、こだわり農家さんの真心が込められたものたち。一口サイズにカットして特殊冷凍で加工されたフルーツは、解凍せずに、そのままおやつとしていただけます。

 

フローズンフルーツHenoHeno

 

ブドウもカチンコチンに固まっているので、ガリガリッとした氷を食べるような食感を想像していたのですが、口に入れてみると、なんとサクサクッ!! ひんやりした果肉に歯がすっと入るのです。ブドウの風味がふわっとして、甘みもそのまま。宝石のような一粒が口の中で溶けていく口福感といったら! こんなにおいしいものが捨てられているなんて、本当にもったいない。

パクッと口の中に入れられるおやつとしてはもちろん、スムージーにしたり、ヨーグルトのトッピングにしたり、ピューレにしたり、サングリアに使ったりとさまざまな形で楽しめます。

 

HenoHenoフローズンスムージー「PONO」

 

2020年9月にはビーツや紫ニンジン、ケールをはじめとした冷凍加工野菜の販売もスタート。サラダのトッピングにしたり、スープにしたり、離乳食にしたりと使い道もさまざまです。また、フルーツと野菜を組み合わせたHenoHenoフローズンスムージー「PONO」にも注目! ブレンダーにそのまま入れてまわすだけなので、忙しい朝にもフルーツと野菜の豊富な栄養とおいしさを手軽に摂取できてしまいます。

 

PONOを使ったフローズンスムージー

 

これらの商品は、解凍せずにそのまま使えるので時短調理にも最適。保存料や甘味料などを使用しない完全無添加なので、お子さまのおやつや離乳食に活用しても安心です。

 

10月は「世界食料デー」月間。また消費者庁、農林水産省、環境省が推進する「食品ロス削減」月間でもあります。食品の食べ切りや、食材を使いきるレシピの提案など、暮らしの中で食品ロスを出さない工夫や取り組みをさまざまに呼びかけています。この機会に、おいしく楽しくフードロス削減に貢献してみませんか?

 

ひと口サイズのナチュラルフローズンフルーツ「HenoHeno」

世界食料デー

食品ロス削減

 

WRITER

味原みずほ
Mizuho Ajihara

敬食ライター。フードアナリスト。都内飲食店を中心にマルシェ、農家、ブルワー、コーヒークリエイター、料理研究家など幅広く取材。好きな場所は道の駅とアンテナショップ。出身地の青森県七戸町(旧天間林村)は“にんにく”の名産地で、シーズンになると放課後は裏の畑で収穫や出荷のためのネット詰めを手伝っていたことも。おやつは自家製黒にんにく。