おばあちゃんが手作りする
ベジタリアン惣菜

WRITER/
Mizuho Ajihara

「クックたかくら」惣菜づくりの現場レポート vol.2

「体に優しい惣菜」をコンセプトに、オーガニック・無添加の食材を厳選する手作り冷凍惣菜の「クックたかくら」。コンセプトの背景には、食べ物への意識を強く持つある出来事がありました。インタビュー第2回は、創業者夫婦の思いを伺います。

我が子のアトピーに気づいたことがきっかけ

東京・東久留米で冷凍惣菜製造業「クックたかくら」を始める以前、自然食品店を営んでいたという高倉正雄さんと久江さん。きっかけは、まだ幼かった娘の静香さんがアトピー性皮膚炎になったことでした。

「これはちょっとおかしいぞ。女房が気づき、普段何気なく食べているものが原因なのではと疑いました。このままではもっとひどくなるのではと心配し、体にいいものを食べさせてみたらどうかと。それで、オーガニックや無添加食品に目を向けるようになったのです」

静香さんのアトピーもやがて改善に向かい、やはり食べ物にはそれだけの力があるということを実感した正雄さんと久江さん。

「食べ物は大事ですよ。とても身近なものだけに、もっと考えるべきだと実感しました。そして素材がもつ “本当のおいしさ” というものにも気づかされましたね」

 

「クックたかくら」高倉正雄さん

 

広告代理店で営業マンをしていた正雄さんはこれを機に脱サラし、久江さんと2人で1983年、自然食品店をスタートさせました。

しかし、当時は大量生産・大量消費向けに農薬や化学肥料が使われた農産物が市場流通を占めていた時代。スーパーに並ばないオーガニック食品や有機野菜は一般家庭にはまだまだ浸透しておらず、手にとる消費者がほとんどいなかったといいます。

「当時、青山にはすでにナチュラルハウスさんがあり、意識が高い人たちの間でオーガニック食品が流行っていましたが、ここ東久留米ではトンと売れませんでした」と当初は嘆いていたという正雄さん。

ところが、有機野菜など余って残すことができない生鮮品を、久江さんがお惣菜にして売り出したところ、思っていた以上の評判に!

「女房はもともと料理が上手。私からの無理難題なリクエストもちゃちゃっと形にしてしまうんです。センスがあるんですね。また、惣菜という形で有機野菜のおいしさもお客さまに伝わったのかなと思います」

惣菜づくりに手応えを得て、1986年、近くに店舗を借り、弁当と惣菜の店をオープン。これが現在の惣菜店としてのはじまりです。そして1990年「クックたかくら」を法人化し、現在の場所に移転。安心・安全の食材と丁寧な手仕事が代名詞となり、取引先も増えていきました。

 

大豆ミートとの出合い

現在40?50種類ほど展開する惣菜メニューのなかでも、主力は大豆ミートを使ったベジタリアン惣菜。しかし、はじめて見た大豆ミートに当時の久江さんは全く興味を示さなかったのだとか!?

 

大豆ミート

 

2000年のある日、正雄さんが取引先の卸売業者から「今後、主流になる」とすすめられ、大豆ミートのサンプルを持ち帰りました。それを見た久江さんは「何これ?こんなのが主流になるわけがないわよ、と試そうともしませんでしたね」と当時を振り返り、苦笑い。

それから6年。ある小売業者から正雄さんに、閉業を余儀なくされた惣菜店の替わりに大豆ミートを使った惣菜を作ってほしいと懇願の依頼が入りました。

「同じ商売をしている仲間ですから、引き受けることにしました。ちょうど、私たちも新しい食材を探していたところでしたので、いよいよ大豆ミートを使った惣菜づくりに挑戦することにしたのです」

久江さんは大豆ミートを前にして、最初はどうやって作っていいのか途方に暮れたといいます。当時はまだ大豆ミートのレシピ本などもなかった時代。「茹でて洗っても大豆臭さがなかなか消えないし、肉と違ってまとまらないし。とにかく、手間がかかって大変でした」

しばらく試行錯誤が続きましたが、大豆ミートの扱いさえ慣れてしまえば、あとはスムーズに。メンチカツや餃子、春巻きといった既存の惣菜メニューで使っている肉を大豆ミートに置き換えるだけなので、ベジタリアン惣菜のレパートリーは一気に広がりました。

 

大豆ベジバーグ

 

台所に立つ人に寄り添った商品開発

水で戻したり、洗ったり、処理に手間がかかるため、家庭で作るにはハードルが高いと感じてしまう人も多い乾燥タイプの大豆ミートですが、うまく処理するコツはあるのでしょうか?

 

「クックたかくら」高倉久江さん

 

「沸騰したお湯で10分ほど茹でたら、水がきれいになるまで何度も繰り返し、ゆすいで洗います。この洗うところが一番大切なポイント。ここは雑にならないように、丁寧にゆすぎ、洗いを繰り返します。それでも、大豆臭さは少なからず残りますので、あとは下味をきちんとつけます。それさえしていれば、あとは通常通り、調理していただけますよ」

手間隙を惜しまず、いかに丁寧に仕上げるかという心掛けが、おいしい惣菜を作る基本にありました。

しかし、処理のコツは心得たものの、手間隙がかかるという部分において依然ハードルが高いまま……。すると、久江さんからこんな提案が!

「家庭で大豆ミートを使っておかずを作ろうと思っても、時間がないと難しいですよね。何回も洗う手間をはぶかないと、一般家庭にはなかなか広まらないと思うんです。そこで、すでにこちらで下処理した大豆ミートの販売も始めました。冷凍商品なので解凍したらすぐに使えますよ」

 

大豆ミート

 

これは主婦歴が長い久江さんならではの心づかいから生まれた商品。一気にハードルが下がりました!これならば、私も早速何か作ってみようと心が躍ります。

商品はスライスとミンチの2つのタイプ。すでに下処理済みなので、解凍後すぐに使えます。

ミンチタイプは麻婆豆腐やキーマカレー、餃子の具にしたり、まとめてハンバーグや肉団子にしたりなど、和洋中さまざまな料理に使うミンチ肉と置き換えて作ればいいだけなので、本当に手軽です。

 

麻婆茄子

 

この日は早速、麻婆茄子を作ってみましたが、「クックたかくら」のミンチタイプは粗挽きで、そぼろが大粒。そぼろの存在感と食べ応えがあり、家族も言われなければ大豆ミートだと分からなかったとのこと!

 

大豆ミートの酢豚風

 

一方、スライスタイプは生姜焼きや回鍋肉、焼肉、パン粉揚げ、煮込み料理など、こちらもいろんな料理に使えます。

スライスタイプで作ったのは、野菜たっぷり酢豚風。大豆ミート自体はさっぱりしていて、食べ応えがあり、まるで鶏胸肉を食べているような感覚です。

ご飯がすすむおいしさで、ついつい食べ過ぎた?なんてことも!でも、肉に比べれば、脂身やカロリーを気にすることなく、ヘルシーにいただけるのがうれしいところ。肉を使うのと同じ感覚で調理できるので、この便利さを知ったらもう後戻りなんてできません。

外食が続いた後や、ダイエットにはもちろん、毎日の食卓やお弁当にも、ヘルシーなおかずとして手軽に取り入れたいですね。

こちらの商品はクックたかくら「グッドミーのミンチタイプ」310円「グッドミーのスライスタイプ」302円として、現在は会員制の宅配サービスに卸していますが、ゆくゆくはさらに販売網を広げていきたいとのこと。

娘さんのアトピーがきっかけで、体に優しいオーガニック・無添加の惣菜、そしてベジタリアン惣菜をも手がけるようになった高倉正雄さんと久江さん。その思いと丁寧な手仕事は子供、そして孫へと引き継がれていきます。今後はどんな展開を見据えているのでしょうか?次回は今年入社した孫の鈴木大将さんにこれからの「クックたかくら」について話をうかがいます。

vol.3は近日公開予定 お楽しみに!


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おばあちゃんが手作りするカラダにやさしいベジタリアン惣菜 ~「クックたかくら」惣菜づくりの現場レポート vol.1


 

【会社概要】
クックたかくら
住所:東京都東久留米市南沢3-1-1
電話:042-474-0876(平日9:00-17:00 ※12:00-13:30のお電話はご遠慮ください)
HP:
http://cook-takakura.co.jp/


【クックたかくらの冷凍惣菜を購入できる店舗】
オーガニック・自然食品を扱う専門店「こだわりや」池袋ショッピングパーク店、国分寺店ほか 

【宅配会員向け】・よつ葉ホームデリバリー ・Alter(オルター)

 

WRITER

味原みずほ
Mizuho Ajihara

敬食ライター。フードアナリスト。都内飲食店を中心にマルシェ、農家、ブルワー、コーヒークリエイター、料理研究家など幅広く取材。好きな場所は道の駅とアンテナショップ。出身地の青森県七戸町(旧天間林村)は“にんにく”の名産地で、シーズンになると放課後は裏の畑で収穫や出荷のためのネット詰めを手伝っていたことも。おやつは自家製黒にんにく。